はい、今月は少なかったですね。わりと柔らかめの本のラインナップです。
(ザ・ビデオ・ゲーム・ウィズ・ノーネーム は読みやすいけどページ数は多かったですけど)
『この10年でいちばん重要な文房具はこれだ決定会議 』ブング・ジャム
『ザ・ビデオ・ゲーム・ウィズ・ノーネーム 』 赤野工作
『行こう、どこにもなかった方法で』 寺尾玄
『あなたのチームがうまくいかないのは「無意識」の思いこみのせいです』 守屋智敬
『されど愛しきお妻様』 鈴木大介
この10年を振り返ることで文房具がどう変わってきたかの概観を語っている、という内容そのものが面白かったです。
個別の文房具の特集本だと、あくまでその時点での最新製品を紹介する内容になります。それを歴史として総括してくれるというのはなかなかないと思われます。個人的にはAJ(アフター ジェットストリーム)という概念がすごく面白かったですね。あと、文房具を自前で調達するというのがリーマンショックから来ている(会社で経費削減が進み個人での文房具自前調達が進んだ)というのも、なかなかに興味深い。
初出は小説投稿サイト「カクヨム」ですね。同様の経緯で書籍化された「横浜駅SF」が結構おもしろかったので手に取りました。
未来からみたレトロゲームレビューなので、レトロといってもそれは現在の私たちにとっては未来。かと思いきや00年代や90年代のビデオゲームへの言及もあったり。
まさにSFのうまい設定が盛りだくさんで紹介されるお話でした。AI、サイバネ化、ネットワークとまさに未来の技術が籠められたゲームが発売されたとき、そのゲームに当時のゲーマー達はどう反応したのか、社会にはどんな影響が出たのか。それらがゲームへの惜しみない愛と鋭い観察眼を以て語られています。
うーん、なんだか上手くこの小説(?)のよさを語り切れていないですね…。とにかく、SF好きで特定のキャラクター描写がなくてもそれほど気にならない、というかたはぜひ。とにかくアイデアやそのSF的な掘り下げが抜群に面白いです。
二人の出会いと生活、そしてお妻様の脳腫瘍と著者の脳梗塞。著者は自分の脳梗塞時の症状と高次脳機能障害を通じて、お妻様の発達障害への「障害を持つ当事者としての実感」を得ることになる。そしてその後になんとか二人で生きていくため、発達障害の妻と高次脳機能障害の自分とで、上手く生活を回していくかにふたりで取り組む…というお話。
著者は「最貧困女子」や「振り込め犯罪結社」など社会のいわゆる下層のひとびとへのルポを書いてきています。医者ではなく、患者側の立場から、社会からこぼれてしまうひとたちに取材してきた経験を通してかかれた本書は、障害を扱う本のなかでも異色。しかしそれがゆえに一般読者にはとても有効だと思うのです。
『「家庭内の障害受容」の話でもありますが、それ以上に世の中のあらゆる「すれ違い夫婦」に届いて欲しい、どうしたらお互いに優しくなれるのかのメソッドを描いた』(日刊ゲンダイHPの著者ページから)というもの。
発達障害の関係者はまず読むといろいろと見る目が変わる思いができそうです。それと障害が特にない家庭のひとでも、他者にどうしたらお互い優しくなれるか、を知るために是非。