2018年3月の読了本リスト

3月はそこそこ読めましたね(小説は4冊で1冊分とか言わないでください)。
ちょっと内容軽めなものが多かったかな。

『アグリビジネス進化論』 有限責任監査法人トーマツ・農林水産業ビジネス推進室
『セレンゲティ・ルール ――生命はいかに調節されるか』 ショーン・B.キャロル
『おカネの教室 僕らがおかしなクラブで学んだ秘密』 高井浩章
『フランス人は10着しか服を持たない』 ジェニファー・L・スコット
『目の前の仕事に集中するためのAppleWatch』 佐々木正悟
『GoodLifeProject人生を満たす3つのバケツ』  ジョナサン・フィールズ
『SHOE DOG(シュードッグ)』 フィル・ナイト
『沙門空海唐の国にて鬼と宴す 巻ノ一』 夢枕獏
『沙門空海唐の国にて鬼と宴す 巻ノ二』 夢枕獏
『沙門空海唐の国にて鬼と宴す 巻ノ三』 夢枕獏
『沙門空海唐の国にて鬼と宴す 巻ノ四』 夢枕獏

 

 

 

  

 

啓発書ですね。私の場合、つい読んでしまう種類の本(2種類目)です。
「1つ目目のバケツは、バイタリティーで、心と身体の状態を表している。
2つ目のバケツは、コネクション(人間関係)を表している。
3つ目のバケツは、コントリビューション(社会への貢献)を表している。
これらのバケツの中身が多ければ多いほど、豊かな人生になる。
3つのバケツすべての中身が満ちあふれていれば、素晴らしい人生になる。
それこそが私たちが追い求めているものだ。」
本書の主張はこれに尽きます。そしてあとは具体的な取り組み方法の紹介です。
心身ともに健康で、人間関係に恵まれ、社会に貢献している、というのは人間が幸福を感じる条件にも近しいものを感じます(経済学における幸福度合いを「測定」する様々な実験などを踏まえて)
平均的、もしくは最頻値的な人生の考え方としては悪くないと思います。しかしすべてのひとがこれに当てはまるわけでありません。今後も啓発書の服用は自制を以て行って参りたいです。

 

ナイキ創業者の自伝です。事実は小説より奇なり、のノンフィクションストーリーですね。文体は素っ気ないですが、なにせ起こっている事実がいちいち興味深い。
新聞書評や広告では大絶賛・必読といったような文言も見かけましたが、本書はなにかしら教訓を得るような啓発書ではありません。ナイキ、あるいは1960~90年代くらいのアメリカ(日本もだいぶ出てきます)の製造小売の空気感に興味があるひと向けにおすすめする本です。

 

基本的には同著者の「陰陽師」シリーズと非常に似た世界観・文体なので、「陰陽師」がお好きな方にはぜひおすすめです。ちょっと長めではありますが、4冊そろえて一気読みするととっても幸せでした。

本書内では空海がなんでも出来る完全無欠なキャラクター(今風にいうなら何でもできるチートキャラ、といったところでしょうか)で描かれていますが、これは史実に概ね沿っているうえ、司馬遼太郎も同じように描いております(『空海の風景』 ご参照)。歴史小説内のパブリックイメージといってよさそうです。

映画は結局観に行けていないのですが、DVDとか配信で観ようと考えています。
なにせ「陰陽師」の映画もなかなかよかったので、日中合作かつかなりのスターキャストをそろえている本作も期待したいのです。そうそう、「陰陽師」の映画といえば安倍晴明を演じたのは野村萬斎さんで、それがもうこの人以外には考えられない、というくらいにぴったりな訳です。「陰陽師」の音楽はフィギュアスケート羽生結弦選手のフリープログラム(Seimei)に使われていたため、平昌オリンピック絡みでもたくさん耳にしましたね。

新しいタイプの経営者の自伝 『シュードッグ』、『行こう、どこにもなかった方法で』

ビジネス書ではない小説的な経営者の自叙伝。アメリカ版がシュードッグ(ナイキ創業者)、日本版が「行こう、どこにもなかった方法で」(バルミューダ創業者)による本です。
出版上特に関連性はないであろうこの2冊。でもこの2冊を読んで、経営者自叙伝の分野で「小説のように書く」という変化が出てきているのかな、と感じました。

会社の経営層の著名人が書く本については、自身の体験をつづりつつその体験の解釈(私はこうしたから成功した、失敗した)がつけられているものが多いという印象があります(それほど経営者著書を読んでいない個人の印象です)。
それに反してこの2冊は、読んでもビジネスで成功するコツなんかはたぶんわかりません。「あのとき何があったか」のような分かりやすい起承転結やストーリー的な構成がされているわけでもないでしょう。特に「行こう」は著者の父母の話から生い立ちの話にもかなりの紙面が割かれていたりします。

ただその分、この2冊は著者の実感・体験により近いのではないでしょうか。
1人の成功例から教訓を引き出そうとすることには無理があるのだし、会社を作って起こったできごとはいろいろあるけれども、体験した本人のなかでストーリーとして完結しているわけでもない(2人ともまだ現役の経営者ですから)。なにか一般的なことがいえるとしたら、ふたりともつくっているモノについてはずっと確固たる信念があったことくらいでしょうか。
体験の解釈抜きで、淡々と体験をつづっている本。それはそれでよいものだな、と感じました。解釈部分に感じる押しつけがましさがないし、著名経営者がしてきている体験は事実だけでもいろいろと面白いので、本の内容は充実します。

2冊通して読んで印象に残ったことはふたつ。
経営者の悩みになるのは商品をつくることそのものではなく、資金調達であるということ(ふたりともずっとキャッシュの調達に疲れているのが伝わります…)。
それと、成功の裏には数多くの失敗が隠れていて、有名になるひとは紙一重でなんとか成功してきていたのだなということです。特に成功と失敗は、最初から上手くいったわけでもないし、ずっと上手くいき続けているわけでもなんでもないというのがひしひしと感じられました。