7月前半は、割と多様性に富んだラインナップでございました。
『朝日ぎらい よりよい世界のためのリベラル進化論』 橘玲
『アウトライン・プロセッシングLIFE』 Tak.
『血界戦線 ペーパームーン』 秋田禎信
『世界史を大きく動かした植物』 稲垣栄洋
『宝石 欲望と錯覚の世界史』 エイジャー・レイデン
著者買いの1冊。タイトルはマーケティング戦略(と朝日新聞出版の自戒?)も含めて、センセーショナルにつけられておりますが、いつもの著者の本と同じく、とても明確で冷静な論理でつづられた本です。
サブタイトルまでが本書の内容を表しています。日本で「朝日ぎらい」という現象が起こっている理由を、日本におけるリベラルの歴史をひもとき位置づけを明らかにしています。それから、欧米でリベラルがグローバリズムと結びついてどのように進化しているかを説明しています。
正直言って政治にはあまり明るくなく、右派・左派の区別がよくわかっておりませんでした。誰がそう言われているのかは、新聞ほかメディアでわかるものの、どの特徴を捉えて右・左、リベラルと呼ばれているのか、支持者層はどのような層なのかがよくわからなかったのです。本書は、私のような「よくわかっていない」者に対して、論理的に説明をしてくれます。そしてさらに「ネット右翼」などまさに今台頭してきている層とそれらの結びつきについてもわかりやすく説明をしてくれました。
ただ、本書が本当に正しいのかについては、他著者などを見て自分で検証していかなければならないところなのでしょうが…。ひとまずは「なんか明確な説明もないし、よくわからない」から「本書の論理だとこうなっているけど、本当にそうなのかな」というところまではレベルアップできました。
アウトライナーの第一人者である著者の、2冊目のアウトライナー本。
アウトライナーを生活に役立てていく具体例とか、著者はなにをどう考え、どんなことについてアウトライナーを使っているのかという話です。技術論の範疇には収まらない、だけれども実際にアウトライナーを使い出すと気になることについて、第一人者である著者はどうしているのかをちょっとお話をお伺いしてきた、そんな感じの読了感でした。
すごく「それそれ!」と思ったのが、
ーせっかく検討したカテゴリーを消してしまうのは、「考える」アウトラインと「使う」アウトラインは違うからです。 実際の生活の中でDOを整理するときに、適切なカテゴリーを探すことが負担になることが経験的にわかっているからです。階層はできるだけ深くしない方が自由度が上がりますー
というところです。頭出しをして考える時点では、なるべく細かく区分けをしておくと、漏れダブりのないMECEな考えに近づけるんですが、実際になにかやる段になると、階層が深すぎると逆にうっとおしく感じる。それは私にも覚えがあったのでちょっと興奮しました。
コミックスの血界戦線を読んでいるので、その流れで購入しました。小説版著者の秋田禎信さんの著作は、とても昔に「魔術師オーフェン」シリーズを読んで以来でした。
主人公は表紙の通りザップ。コミックスのキャラクターとか雰囲気が見事に小説になっていますので、コミックスが好きな方にはおすすめですねー。
コメ、コムギ、トウモロコシ、ジャガイモ、トマト…。日本でならほとんどの人が知っているし普段なにげなく食べている植物は、どんな歴史を持っているのか。人間がよく知っており食べている植物は、人類史に大きく影響を与えてきた植物でもあった。
そんな壮大な植物たちのエピソードを、平易で軽快につづっている本です。時期が時期だけに夏休みに1冊おすすめしたくなるような本。個人的には、アメリカの食事になにかというとポテトが出てくる理由がわかったような気がしました(少し閉口したので…)。
人間は穀物(小麦)によってうまく自分たちの種を繁栄させてきたと思っているけれど、それは花粉を運ばされているミツバチと何が違うのだろうか。農業を始めたことで、人間は農業をやめて狩猟採集生活に戻ることができなくなってしまった。このあたりは『サピエンス全史』でもありましたね。
宝石がいかに欲望と錯覚によって価値を付与されてきたかがわかる本です。
ダイヤモンド、エメラルド、真珠…様々な宝石を人類はどこで見つけ、どのように収集し、どのように価値があると吹聴し、価値あるものとして見せびらかしたのか。
宝石の価値とは欲望と錯覚であるという冷静な姿勢をもとに、歴史をひもとき、欲望と錯覚部分を明らかにしていきます。宝石の歴史がつづられているので面白かったですね。
歴史上、希少で貴重だった宝石が従来よりもより多く手に入るようになる(新しい鉱山が見つかる、養殖が可能になる)際に、いかにその宝石の価値を落とさないか、ということに宝石を売る側は労力を注ぎ込んだか、そしてデビアスやミキモトは見事にそれに成功してきたかがわかる、皮肉たっぷりの本でもあります。