2018年11月の読了本リスト

知的生活の設計」 堀正岳
ホモ・デウス 上下合本版  」 ユヴァル・ノア・ハラリ
TDL(東京ディズニーランド)大成功の真相」 ダグラス・リップ

「ホモ・デウス」にがっぷり四つだった11月です。

本書の内容は、10年後を見据えて知的生活(情報へ触れる)をどのように設計するか、という方法論の紹介です。理論的な説明に始まり、具体的なサービス名を挙げその使い方までしっかりと紹介しています。しかしページ数は多すぎずちょうどいいボリューム。読みやすくとっつきを良くするために、かなり文章を削ったのではないかと邪推します。

本書は、巷に溢れるビジネス書・ライフハック本とは一線を画します。 それは本書が10年という「中長期的な軌道」の設計を示す、というコンセプトで作られているからです。
ビジネス書・ライフハック本は、良くも悪くも、目の前の仕事や生活を何とかしようと思った際に読むことを想定しています。差し迫った問題に対処するのは、もちろん大事なことです。そしてそのための本が、現状でこれだけ書かれ読まれているのであるならば。本書のような「中長期」的に大切なことを考える本も、もっとたくさん出版され読まれてもいいのだと思います。

重要・緊急での時間管理のマトリックス(「7つの習慣」のスティーブン・R・コヴィー)に照らしあわせるなら、「重要だけれども緊急ではない」 第2領域の設計を扱おうとしているのが本書だと分類できるかもしれません。

 

本書はひとことで言うなら、起こりうる未来の提示と警鐘、です。

現在サピエンスの社会で起こっていること、過去のサピエンスの歴史を丁寧に説明し、その二つの材料から「不死、幸福、神性を目指す」未来を予測しています。そして、その未来がディストピアとなる可能性を示し、最後にまだディストピアは可能性の一つに過ぎず、回避も可能と述べています。
本書で展開される解説は前著「サピエンス全史」同様にエキサイティングで、本書で示されるディストピアに説得力を持たせます。


サピエンス全史でもそうなのですが、結論はシンプルなのです。結論に説得力を持たせるための、膨大な語りや説明の面白さにこそ、本書の真髄はあります。読んだふりをするだけなら上記の要約で十分です(よくはないのでしょうが)。自分で読んでみて、著者の語りに対し同意や反発を覚えてみるところに、やはり面白さがあるのだと思います。

例えば私自身は、人間至上主義の部分にはいくつか異論を覚えるところがあります。
「完全に単一の自己」「自由意志」が存在しないために、個人の価値は低下する、と著者は述べています。確かにそうなのでしょうが、この「個人の価値」とは、そもそもが西洋における「個人、個人主義」という概念です。

日本含む東洋的な文化圏でいう「個人」は、そこまで絶対的な独立性を持つものではなく、それが故に「個人の意味・価値」もそこまで大きなものではありません。だから実は個人に意味や価値がない、と言っても社会的なインパクトもない。その代わりに意味や価値がなくても、社会は十分に存在していけることの実例になると思うのです。


こんな感じで本書で紹介されているさまざまを味わい尽くす。そんながっぷり四つに組む面白さが味わえます。

 

東京ディズニーランド(TDL)建設までの裏話を、アメリカのディズニー社に当時所属していた著者が明かします。

タイトルに「大成功の真相」とありますが、TDLの成功分析の本ではありませんのでご留意ください。TDL誘致~開園までを、アメリカディズニー側の立場でみた資料の一つです。日本のオリエンタルランド側と資料内容を突き合わせたりすると、近代史検証として楽しそうです。

他にも、TDLという特殊性にこだわらず、「1970~80年代の東京での、日米合同のエンタメプロジェクト」の先駆け例として読んでも面白いです。コンテンツ内容にこだわるのが日本ではなくアメリカ側である、輸入コンテンツ例としてはいろいろ示唆がありそうですね。

 

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