2019年2月後半の読了本リスト

「賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか」 井出留美
「知性は死なない 平成の鬱をこえて」 與那覇潤
「「研究室」に行ってみた。」  川端裕人
「勝間式 超コントロール思考」 勝間和代


「賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか」 井出留美

恵方巻など、食品ロス問題を時々目にするようになってきたので、全体感をつかみたくて買いました。
日本の食品ロス632万トンのうち、約半数(302万トン)は消費者由来、残り(330万トン)が、飲食店や食品メーカー、販売店など事業者由来。
半分は私たち消費者の直接的な食品廃棄、残り半分も、結局は私たちが購入したり外食する際の行動が原因なのだそう。

だから、食品ロスを減らすためにやるべきことは、スーパーやレストランを非難することではない。消費者個人で買い物の際にできる対策等がたくさんあり、それを消費者として各人が実施していくことが効果を出す、という極めて真っ当な論を丁寧に展開しています。「消費者として自分が何をすればいいのか」が明確に提示されているのでとても良かったです。

消費者が動きを変えれば、消費者のぶんだけではなく・事業者にも影響を及ぼすことができる。それは消費者にとって、個人でできることが現実を変えられるという希望であり、個人でやらねば現実が変わらないという責任でもあります。本書で得た知識を使って、今後食品をムダなく取り扱おうと思います。
あとは著者が指摘していた通り、買い物の仕方や、食べられるものの見分け方は、義務教育の家庭科の授業にぜひ盛り込みたいです。食べ物の栄養の勉強や、簡単な調理やお裁縫と同じように、買い物の仕方や食べられるものの見分け方は、十分実践的で役に立つ知識でしょう。

 


「知性は死なない 平成の鬱をこえて」  與那覇潤

大学教授であり「中国化する日本」で話題にもなった著者。その著者のうつ病経過に関する本ということで、なんとなく心配をしつつ手に取りました。
前半の、うつ病の症状、社会がうつ病にたいして持っている偏見に関する部分は、著者が実際にうつ病の患者として見聞きした体験なので、とてもリアリティがありました。偏見には自分でも思い当たる節があり反省する次第です。

著者は、自分に起きたうつ病の経過で、 能力が低下し、能力低下を自覚し、自分には価値がないと思うことで生きる気力が失われる、と述べていました。確かに、もし、自分で自らの価値だと思っている能力が失われていく、という体験をしたら。自分自身の価値そのものが失われていくような、強烈な喪失感に襲われて、生きる気力が失われるというのもわかるような気がします。

後半は、 知性の象徴である大学の中で著者が見聞きした、知性の敗北と呼ばざるを得ない様々な事例、世界で知性主義が敗北してきたという近代20世紀の歴史を挙げて、知性の敗北とこれからの展望について語っています。
著者が勤めていた大学での様々な事例は、大学にある程度の敬意を払っていた私にとっては相当にショッキングでした。社会全体で知性が敗北する趨勢にあるなかで、大学も例外ではないことが、内側から暴露されてしまったわけで。
ただ、大学を退職した著者が、大学の外にも知性ある対話ができる場がある、と理論や希望的観測だけでなく、自らの経験に基づいて最後に述べてくれています。それが、著者ご本人と、この知性の敗北した社会で生きていく私たち、両方にとってのパンドラの箱に残った希望のように感じます。

 


「「研究室」に行ってみた。」  川端裕人

研究者とは何をしているのか、どんな経歴の人がいるのか、理系研究者数人にインタビューした内容をまとめている本です。中学生や高校生でこれを読んでいたら、こういった、普段なかなかメディアでは取り上げられない、接することの少ない分野を目指すきっかけになるのかもしれませんね。
中高生以外にも、一般の人に研究者の実態を知ってもらう、ひいては研究への費用投下への理解を進める助けになるんじゃないでしょうか。本書のようなコンセプトで、文系研究者編もあったらいいのに、と思います。

 


「勝間式 超コントロール思考」 勝間和代

いつも通り、勝間節全開の本です。自分はどういう原則に沿って、具体的に何をどうやっているのかを、仕事・家事・健康面と幅広に説明してくれています。
仕事だけでなく、生活面(家事など)にもかなりページを割いており、家事と仕事の両立に悩む人にも役に立ちそうです。ただ、勝間さんが自分のことを語る本にはだいたいそうなのですが、良くも悪くも極端な例です。まるまるマネするというより、最先端技術での見本をみるような気持ちで読むのが精神衛生上よろしいかと思います。要は、完全コピーはできないけど、いろいろ参考になります。

面白かったのは、本書で「(仕事をする際)置かれたところで頑張ろうとせず、自分に向いたところで頑張れるようにしたほうが良い」と勧めていたこと。これは橘玲「もっと言ってはいけない」でも提示されていました。日本社会の現場を知る超リアリストである、勝間和代さんと橘玲さんが口をそろえて同じことを言っているというのはなかなか示唆に富んでおります。

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