2019年4月の読了本リスト その2

「貧乏人の経済学」 アビジット・V・バナジー
「持続可能な医療」 広井良典
「サピエンス異変」 ヴァイバー・クリガン=リード
「共働き夫婦 お金の教科書」山崎俊輔

割合にまじめな本が多いような。


「貧乏人の経済学」 アビジット・V・バナジー

相変わらず長い厚い本ではあるのですが、 その具体例の紹介・そして様々な対処が必要であり、 一つの方法だけでは対処できないということこそが、著者の主張。なのでこの文章量もやむを得ない。
本書は、貧困をモデルとしてひとくくりにしない、というスタイルを取るため、具体例には意外なものが多く、それぞれ面白いです。訳者の下記の文章が本書のちょうどよいまとめとその後の展望を示していますので引用します。

本書の多くの知見は、かなり意外なものだ。たとえば、
・飢えている人でもカロリー増よりおいしいものやテレビのほうを優先する。
・就学率が上がらないのは、学校がないからではない。むしろ子供自身や親が学校に行きたがらない/行かせたがらないから。
・マイクロファイナンスは悪くはないが、一般に言われるほどすごいものでもない。
・高利貸しは悪らつな強突く張りでは(必ずしも) ない。
・途上国に多い作りかけの家は、実は貯蓄手段。

すでにお気づきの方もいるだろう。本書の多くの知見は、実は開発援助や貧困削減といった狭い分野だけに関係するものではない。もっともっと広い意義を持つ。  たとえば冒頭で挙げられる二つの発想、つまり途上国の自主性と市場に任せるべきか、それとも大きく介入して支援すべきか、という議論は、世間一般で見かけるあらゆる経済論争に登場する、自由市場か政府か、という話の一変種でしかない。


「持続可能な医療」 広井良典

制度として持続可能な医療の形を、著者が様々な観点から読み解いて提示しています。医療分野外の事例提示も散見され、専門外のことを語っているのでは…という感じもあるのですが、それで本書が読みやすくなっている節もあるので、あまり拘らずに読み進めました。

社会保障費問題は、他の研究者の本でも読みましたが、診療報酬制度のありかた(「個人診療院」優先になっているなど)はあまり知らなかったので参考になりました。
ほか、健康と長寿は、医療分野だけではなく地域コミュニティなど複数の分野連携が必要という主張は、確かにうなづけます。一分野からのアプローチでは太刀打ちできない大きな問題に、複数分野の力を集めて対応すれば社会問題の大半を占める高齢者・少子化問題への有効打になるのでは思われます。

 


「サピエンス異変」 ヴァイバー・クリガン=リード

人間の体の動かし方が、近代の2000年での社会や生活の変化で、いかに変わってきているか、そしてそれは人間の体の仕組みといかに合っていないものであるか。
それを詳細に分析した上で、結論は座ってばかりいない立って体を動かせ、たくさん歩け。シンプルで納得できて脳活しっかり考えないと達成が難しい目標。
とりあえず腰痛やなんかに悩まされてる人は、一度お読みいただくと目からうろこが落ちて、たくさん歩きたくなること請け合いです。そう、タイトルがサピエンス全史のようですが、原題は違います(Primete Change)ので大丈夫です。


「共働き夫婦 お金の教科書」山崎俊輔

「共働きスタイルの夫婦が増えているのに、共働きの夫婦のためのお金のルールをまとめた本がない、ということが常々気になっていました」という本書紹介コメントにとても共感しました(我が家は共働きです)。
家計に関する書籍・雑誌・ネット記事でも、共働きに特化したマネープランというのはあまり見たことがなく、興味を惹かれました。社会制度上かなり専業主婦(夫)家庭とは異なるところが多いのをきちんと解説しておりとてもありがたいです。
特に印象に残ったのは、自身も共働き夫婦である著者が、同じ共働き夫婦にエールを送るようなトーンで本書を書いているのだな、ということでした。
「厚生年金と退職金など、最後にメリットがたくさんあるので、育児期の大変な時期を頑張って乗り切ろう」と、保活や育児オペレーション分担などについても述べているので、マネープランだけではなく家事育児含むライフプランとしてとても参考になりました。

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