『異文化理解力 ― 相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養』 エリン・メイヤー

とりあえず海外とやりとりする人は知っているとそうでないとではかなり差が出そう。副題には「必須の教養」とありますがまさに「これを早く知っておけば…!」と思える一冊です。

INSEADというインターナショナルビジネススクールで教授を務めた著者(アメリカ人)が編み出した、文化の違いによって生じるビジネスコミュニケーション上の困難を理解し、効果的に対処するための方法を説明しています。
理解・対処に使うのは、文化ごとに異なる分布を示す8つの指標。この指標を用いて「カルチャー・マップ」を描き、相手と自分のカルチャー・マップの8つの指標ごとの差異を認識し、個別の対処方を説明しています。8つの指標は以下の通り。

1.コミュニケーション…ローコンテクストvsハイコンテクスト
2.評価…直接的なネガティブ・フィードバックvs間接的なネガティブ・フィードバック
3.説得…原理優先vs応用優先
4.リード…平等主義vs階層主義
5.決断…合意志向vsトップダウン式
6.信頼…タスクベースvs関係ベース
7.見解の相違…対立型vs対立回避型
8.スケジューリング…直線的な時間vs柔軟な時間

本書はこの8つの指標、それぞれどんな国が直線図で見るとそれぞれどこに当てはまるかの説明をし、差異がある場合の対処方を、具体事例たっぷりに語っています。
このたっぷりの具体事例が、本書に生き生きとした印象を与えています。海外で仕事をしたことがなくても旅行ややりとりをしたことがあるなら、そうそう!とうなずきたくなる「仕事上でコミュニケーションが上手くいかなかったあるある事例」が沢山出てきて、指標だけだと分類的で味気なくなりそうなところを見事にカバーしているんですね。ちなみに日本はいろんな指標で結構極端なところにいるので面白いです。

また、注意として繰り返し触れられているのは、本書で紹介された傾向は国ごとに見られるけれどそれはあくまでレンジ(幅)があるということです。個人に対する場合は、相手をきちんと観察することが大切だと著者は何度も述べています。単に指標を提示、説明しておしまいとするのではなく、本書の提示する指標を本当に効果のあるものとするために、できるだけの言葉を尽くしているのだなと感じました。

この「なるべく明快に説明する、表現しきる」ということ自体が、指標1.コミュニケーションのローコンテクストの顕著な特徴(しかもアメリカ人はここに位置する)なのです。著者の行動自体が、本書の指標できちんと説明が可能とは、お後がよろしいですね。