『パパは脳研究者』池谷裕二

以前に著者の別作『単純な脳、複雑な「私」』『のうだま』などを読んで、信頼できる面白い著者さんだと思いました。その著者が自分の子育てについて書いたもの、ということで 脳研究×子育ての現場 のなにかしらわくわくするものが読めそうだと期待して本書を手に取りました。

本書は、育児雑誌に月1回連載されていたコラムをまとめなおしたものです。著者のお嬢さんが0ヶ月~4歳になるまでの様々な反応や行動を、子煩悩な父親としてかわいがるとともに、脳研究者ならではの面白い分析・解説を加えています。
毎月毎月の子どもの成長を見守っている感じがするので、お子さんをお持ちの方は「あるある!」と共感できそう。これから育児に挑むお父さんお母さんにとっては、不安を煽らない、子どもの発達に対する専門知識と落ち着きある良識を併せ持ったひとつの例として、安心して読めます。

自分で子どもを育てていくなかで、子どもに関する専門的な知識(本書では脳の発達に関する知識)があると、知識がない普通のひととはまた別の見方・発見があるんだ、ということを本書では強く感じました。
子供(わが子)の観察の際に、子どもの発達に関する知識がある著者はとても楽しそうなのです。子どもがなにかを「できる」ようになったとき、「できた」こと自体のよろこびだけではなく、その「できた」が発達過程の大きな流れのひとつとして位置づけられる。早いことも遅いこともありますが、それらのものごとを点だけではなく線の観点からも俯瞰して見ることができる。
何かを観察するとき、それに関する知識があると、知識がないよりももっと楽しい。それは子供(わが子)についてもきっと例外ではないのでしょう。

特に父親・母親はわが子(赤ちゃん)を観察する機会・時間が圧倒的に長いので、そのときに子どもに関する信頼性の高い(ここが大事です)知識があるときっと楽しいんじゃないでしょうか。そういう子育てが楽しくなる信頼性の高い知識を、子どもの年齢に合わせて手に入れられる本としても、本書はオススメです。

脳研究自体に興味がおありならぜひこちらも。安心と信頼のブルーバックスです。